オトメ*ドメイン 感想 考察 大垣ひなた編part3
※注意 以降、ネタバレ要素を含みますので未プレイの方はご注意ください。
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前回の事件からお嬢様モードで過ごすようになったひなた。
それは事情を知っている湊にとってはただならないことで、あれほど人形に戻るのは嫌だと言っていたひなたが今そう振る舞っているわけですからそれが世間からみた成長であったと理解しても納得することはできないでしょう。
ある日湊はひなたから求められたところを断ってしまいます。
ひなた「どうして、何もして下さらないんですの・・・?」
湊「今のひなたさんは・・・別の人みたいに思えるんです。」
ひなた「わたくしは・・・大垣ひなた、ですわ・・・」
湊「分かっています。でも・・・ボクの中では別の人なんです」
湊「今のひなたさんも、素敵だと思います。好きだって言ってもらえるの、嬉しいです・・・。最初から恋をやり直したら、また好きになると思うんです。」
「でも、ボクが好きになったひなたさんとは、別の人に変わってしまったから・・・」
ひなた「・・・大人になるのは、変わることだと思うんです。」
湊「・・はい」
ひなた「今さら、元には戻れない・・・ですわ・・・」
ひなたさんは、大人になってしまった。
彼女には、今さら子供に戻るつもりはないし、僕も戻るべきだとは思わない。
だから・・・だから・・・。
ひなた「今のわたくしを受け入れて頂けないなら・・・。仕方がないですわ・・・。」
「わたくしは今も・・・お慕いしていますわ」
「好きです・・・。でも、お姉さまが嫌になったのなら」
「ふふ・・・、いつでも、お別れを言って下さいね?」
・・・
ここは非常に重要なポイントですよね。
このゲームに登場するヒロインはなにかしら変わったところを持っているヒロインしかいないわけですがひなたは残念なポイントという意味では一番平凡なヒロインかもしれません。
しかし、このゲームの中で一番周りの人間に溶け込めていないのは間違いなくひなたと言えるでしょう。そんな彼女が今こうして周りに適応できている。それを言葉一つで止められないと思うんですよ私は。
確かに事情を知っている人からすれば今のひなたが最も良い状況であるとは言えません。それは当たり前です。ただ今ここで「元に戻ってください」というのはあまりにも残酷すぎると思います。
それは相手のことを本当に思いやった言葉ではなくただのエゴ。
自分が好きになった女の子が変わってしまった、だから戻れ。
それはこちら側の単なる欲望でしかないと思うんですよ。
戻ったところで周りに溶け込めていない状況は変わらない、そうしたら誰が責任を取ってくれる?その覚悟は?
本当に彼女のためを思ったとすればここで元のひなたさんに戻ってくださいなんて言葉は言ってはいけないと思います。
それはこのもう少し後のクラスメイトとの会話を見てもわかることでしょう。
それゆえに今の湊の葛藤というものは妥当なものだと思います。
決して軽い気持ちで「元に戻ってください」という言葉は発していないんですよね。
ただ、今の彼女では答えることができないという否定だけをしている。
少しふっ切れないところはあるかもしれませんが、ひなたのマイノリティをしっかり理解した上での行動だと思います。
・・・
部屋に戻ってきた湊は風莉と相談を始めます。
風莉「本当に・・・湊って、いい子だと思うわ」
「誰にでも優しくて・・・尽くしてくれて。他の人の幸せとか、将来とか、そういうところまで大事にしてくれて」
「そんなあなたは、きっと正しいのだと思うわ」
「だけど、時々はいいんじゃないかしら?」
「我が儘を言っても。間違ったことを言っても、いいと思うの」
「ねえ、教えて?あなたは、何を望んでいるの?」
「あなたの幸せは・・・どんなこと?」
湊「身勝手・・・ですけど・・・。元の、中二病のひなたさんに戻って欲しい・・・です。」
「ボクが好きになった、ちょっとおかしな女の子に、戻って来て欲しいです・・・」
「変わってなんか・・・大人になんてなって欲しくない!」
風莉「そう。なら、あの子には元に戻ってもらいましょう」
間違いだらけの本音を、風莉さんは至極アッサリと肯定してくれた。
風莉「ひなただって、以前の方がずっと楽しそうだったわ。だから私も、その方が良いと思うの」
湊「はい・・・、はいっ!」
・・・
ここで多くのプレイヤーが望むであろう結末を「間違い」とハッキリ言えるところ、素晴らしいと思います。
やはり風莉さんは自身のルート以外すべてで湊の最後の一押しをしてくれるんですよね。他のゲームでいうところの親友ポジションが風莉に変わるのだと思いますがホントにいい味出してるんですよこれが・・・
さて、そんな風莉が間違いといったその湊の本心。
湊本人が「身勝手」と言っているのが非常に印象的です。
先ほどひなたに直接言えなかった、言ってはいけなかったその言葉を引き出し、物語は最終局面へ向かっていきます・・・
・・・
突然風莉に体育館へと呼び出されたひなた
ひなた「あのぉ・・・風莉お姉様・・・?」
「な、なぜ真っ暗なんでしょう・・・?すみません、誰かいらっしゃいませんか・・・?」
「あら・・・?舞台の方で・・・何か・・・」
どうやら僕の気配に気づいた様子。
ちょっぴり不安そうに、一歩、二歩と近づいてくる。
・・・さあ、いよいよだ。
本当にこんなことで解決するのか。正直なことを言うと、自信なんてあんまりない。
ドン引きされたら、恥ずかしいだけの黒歴史になると思う。
──でも、きっとそれでもいいのだろう。
だって、今の僕が求めるものも、ただ恥ずかしいだけの黒歴史なのだから。
ひなた「すみません、これって一体・・・」
そして、決めてあったラインを──彼女は踏み越えた。
湊「ククク・・・ハハハッ!!!よくぞここまで辿り着いた!東方将軍ツァラトゥストラよ!」
ひなた「ふにゃっ?えっ・・・ええっ・・・?」
湊「我が名は魔王ミナト!!!千年の眠りを経て、今こそ目覚めの刻を迎えた・・・!」
「四天王が一人、東方将軍よ!我に従え!今こそ明かそう──我こそがそなたの主であるっ!!!」
ひなた「~~~~っ!か、カッコいいのだっ!」
湊「フ・・・、我がカッコイイ・・・?そのようなこと、当たり前であろう──」
「しかし、我が暗黒の波動は流石であるな。こうも簡単に干渉できるとは、クク・・・」
ひなた「干渉・・・と申されますと・・・」
湊「そなた、真の姿を取り戻しつつあるだろう?」
ひなた「へっ・・・?」
「あ・・・あ・・・」
ちょっと混乱した様子で、自分のほっぺたをつまんだりしてあたふたするひなたさん。
我に返ってしまったらしく、大きく深呼吸をして、
ひなた「・・・これは何のお芝居ですの?」
「お姉さま・・・恥ずかしくないんですの?」
湊「恥ずかしい・・・?恥ずかしいだと?そなたはそう尋ねたのか?小さき者よ・・・!」
「恥じらいなど・・・!!初めてスカートをはいたあの日に捨て去ったわっ!!!」
「あの日の屈辱に比べればっ!むしろ今の我は最高だっ!カッコイイ・・・!可愛いなどと言われたくなかったっ!」
ひなた「な、何も言えませんわっ・・・」
湊「だが、そんな我に比べて・・・今のそなたはどうだっ!忌むべき姿ではなかったのか?己に満足していると断言できるのかっ!」
ひなた「・・・それは」
「・・・それでも、これでいいんですの」
「お姉さまも、わたくしも。大人になりましょう・・・?下らない演技は、もうおしまいですわ」
湊「笑止ッッ!!!!」
「愚か者がッ!今のそなたが演技をしておらぬとでも?かつて自ら否定した、滑稽な芝居に過ぎぬではないかッ」
ひなた「そ・・・それは・・・」
湊「否と申すなら、心より誓って断言してみせよ!今のそなたが、真の大垣ひなたであるとなッ!」
ひなた「い・・・今の、わたくしが・・・」
湊「声が小さいぞォ?ああんっ?」
ひなた「・・・どうしろと仰るんですの」
湊「どうもこうもあるまい!我は今のそなたを否定するのみ!!!」
ひなた「ぐすっ・・・、そんなこと、言われても・・・」
「もう、わからないです・・・わからない・・・」
「ひなたっ、自分がどんな人なのか!分かんないもんっ!」
湊「しょうがない人ですね・・・ひなたさんは」
きっとこの人は、小さい頃から演技ばかりしていて、それが日常だったから・・・混乱しているのだろう。
だから、いつも側で見つめていた僕には簡単な・・・当たり前のことが分からない。
ひなた「お嬢様が、違うなら・・・ひなたって、どんな人?魔界将軍は・・・嘘だもん・・・お芝居なんだもん・・・」
湊「そうですね・・・どっちも、本物のひなたさんじゃありません」
ひなた「全然っ、わかんないよぉ・・・!助けて・・・、からっぽなの・・・見つからないのっ・・・」
湊「・・・そこに、いるじゃないですか」
ひなた「ぐすっ・・・えぐっ・・・、ふぇ・・・え・・・?」
湊「今そこで、泣いているあなたが、本物じゃないですか」
「泣き虫で、甘えん坊で、子供っぽくて・・・」
「自分が分からなくて、悩んで、迷走ばかりしていて・・・」
「そんな・・・邪気眼使いじゃなくても中二病の、迷子の女の子」
「今のあなたが、ボクの好きになった人・・・ひなたさんです」
ひなた「・・・今の、ひなた」
「ぁ・・・あぅあ・・・、な、なんか、恥ずかしい・・・」
湊「誰だって、ちょっぴり演技をしながら生きています」
「きっとそれは、裸の心にまとうお洋服みたいなものです」
「だから、ちゃんと本当の自分を見つけたら・・・、お気に入りの服を着てもいいんじゃないでしょうか?」
「それが好きなら、いつまでも子供服を着ていてもいいじゃないですか」
「気に入らない、似合わない演技をずっと続けることはありませんよ」
ひなた「だけど、そんなの・・・みっともないのだ」
湊「はい。だから、TPOに合わせて着替えましょう。大人なんて、きっとそんなものですよ」
「いつも、同じ自分でいる必要なんて、どこにもありません」
「だから、ひなたさん・・・。今はボクと同じ服を着て、遊んでくれませんか?」
・・・
湊「フハハハッ!!さあ選ぶがよい、偽りの姿をっ!我は来る者を拒まぬ!去る者を追うこともせぬッ!」
ひなた「くすっ・・・お姉さま、めんどくさい人なのだ」
湊「ククク・・・自己紹介かな、それは?」
ひなた「だよねぇ・・・?理解されない自分、最高だよ・・・」
「でも・・・だからこそ。一緒に遊べる人と出会えるのは、本当の奇跡みたいで」
ひなた「クク、お姉様・・・否、魔王様よ。きっと、我らの歩む道は黒歴史となるのだぞ?」
湊「フッ、そなたと共に歩めるなら、望むところである」
ひなた「左様か、ククク・・・ならばよかろうっ!」
湊「フハハハ・・・!征くぞ、我が覇道を・・・!我にはそなたの力が必要だ!」
ひなた「魔王様に忠誠を・・・!この東方将軍に委細お任せあれ!」
湊「否!ただの忠誠など我は求めぬ!身も心も、そなたの全てを我に捧げるのだ・・・!」
ひなた「ふぇっ・・・?ま、魔王様・・・?」
「あの、あの・・・それって、プロポーズなのだ?」
湊「・・・さ、左様っ!返事をするがよい!」
ひなた「え、えっと・・・あの・・・」
「えへ・・・魔王様に、生涯の忠誠を・・・!」
湊「・・・よろしく頼みます、東方将軍」
ひなた「うんっ♪」
こんなおかしなプロポーズは、そうそう無いと思う。
でも、これでいい。僕たちは──これでいい。
いつか二人の間に子供が出来て、プロポーズの言葉を聞かれたら・・・きっと揃って枕に顔を埋めてバタバタするのだろう。
だけど、僕らの黒歴史は──大切なものだから。
ひなた「魔王様、大好き・・・なのだっ♪」
・・・
さいっっこうだああああああああああああああああああああ
いや、最高じゃないですか?
正直最後の展開は読めていたところではあります。
ハッキリ言って予想通り。
でもそれがすとーんと落ちてくる、いいエンディングでした・・・
特に読み解くのに難しい部分は無かったと思います。
もうその通りなんですよ。
ひなたの本当の問題は「自分がない」こと。
その答えは湊はもちろんですが、プレイした皆さんもわかっていたことではないでしょうか。
「泣き虫で、甘えん坊で、子供っぽくて・・・」
「自分が分からなくて、悩んで、迷走ばかりしていて・・・」
「そんな・・・邪気眼使いじゃなくても中二病の、迷子の女の子」
「今のあなたが、ボクの好きになった人・・・ひなたさんです」
私は特に泣き虫で甘えん坊で子供っぽいってところが本当にひなたの好きなところなんですよね・・・
共通ルートでみた甘えん坊のひなたさん、本当に可愛かった。
このシナリオを作った人が「ひなた」というキャラクターを愛していることが伝わってくるようで私は感動してしまいました。
本当の自分を見つけたなら、場合に応じて自分の思うように振る舞えばいいと。
成長するとは、大人になるというのは多分そういうこと。
それこそが本当にひなたというキャラクターの将来を見出した結論ではないでしょうか。
そしてなぜここまでの大舞台を用意したのか。
一つはひなたの心を揺さぶること、二つは普段できないような口調で深く入りこんで振る舞えるように、三つは一生この黒歴史に付き合う覚悟の表れだと思います。
今までは少し乗り気ではあったもののひなたの設定に合わせていたのですが、今回は本当の意味で初めて湊が作った設定なんですよ。
それこそが本当に中二病についていくという覚悟を示すことになるでしょう。
なぜ中二病の女の子でなくてはならないのか、そんなもの本人の言う通り我が儘でしかありません。
中二病の女の子を好きになったから。
しかし、そこで相手のことを思いやった解決策まで見出だし、自分自身が中二病の世界を作り込むことで「孤独は嫌だ」と言っているひなたに寄り添う人間になると、自分自身を投げ売ってでも訴えかけているわけですね。
王道とテンプレって違うと思うんですよ。
今までに見たことあるようなシナリオでもしっかりとキャラの関係性や感情的な部分をしっかりと作りこむのが王道、今まであったものを張り付けていくのがテンプレじゃないかなーって私は思ってます。
初心者視点の意見ですが、エロゲ―ってシナリオが今までにない新規性が割と重要視されてるなーと個人的にはおもっています、しかし、目新しいシナリオでもキャラクターの感情をおざなりにしてしまうとただシチュエーションで楽しんでるだけでヒロインの魅力に気が付けなくなることもあるのではないでしょうか。
もちろん今までにない革新的なシナリオを生み出していくのがエロゲ―の良いところではあると数少ないプレイ作品からそう思っているのですが、ヒロインとどんな恋をして、どんな人間模様が見えるのかというのも大切だと思っています。特に私はその部分がないとあまり評価が上がらないと思います。あくまで個人的な感想ですが。
ひなたちゃんルートの考察はここまでとさせていただきます。
個人的にもう少し好きなポイントをちょっとあげさせてもらうと共通ルートの下のシーンですね。
ひなたというキャラクターの太陽のような温かさが出てくる良いシーンだったと思います。
確か風莉さんと微妙な雰囲気になってるときにひなたちゃんが手を握ってくれた時だったかと。
ひなたちゃんはシナリオ展開こそ王道でしたがそれが枠にハマっていて、求めていたところに落ち着いたという印象でした。
語れることはもっともっとあるのですが、今回の記事はここまでとさせていただきます。
また次回の記事も見ていただけると嬉しいです。
↓他ルート
オトメ*ドメイン 感想 考察 貴船柚子編part1 - lowhigh物のゲーム見聞録