オトメ*ドメイン 感想 考察 共通ルート編
※注意 以降、ネタバレ要素を含みますので未プレイの方はご注意ください。
今回は共通ルートに関しての軽い感想の記事にしようかと思います。体験版のみでカバーしきれる範囲ではないのでご注意ください。
このゲームは本当にシナリオの構成がキレイなので共通ルートだけの話をした上でキャラの個別ルートの部分まで別の記事でお話をできると思ってこういう記事構成にしました。
では本編の話に入っていきましょう。
簡単なストーリー説明とおおまかなキャラクター説明は公式サイトを貼っておきますのでご参照ください。
やはりこのゲームで真っ先に気になる部分は主人公が男の娘だということですね。
女子校で生活するようになった主人公の飛鳥湊は女装して過ごさざるを得なくなったわけですが、それゆえにこの共通ルートではヒロインとの距離が非常に近いです。
それが一つ良いポイントですね。
巷ではこのゲームで一番人気なのはこの飛鳥湊くんのようで・・・
美少女ゲーム大賞2016キャラクター部門ではなんとグランプリを取ったとか・・・
確かにこの主人公はヒロイン性能が完璧なんですよね。
家事完璧、真面目、世話焼き、ちょっとツンデレ要素あり、反応が可愛いなどとこのゲームに登場する変わったヒロインよりよっぽどヒロインをしているという始末。
ですが私がここで言いたいのはそれだけがこのゲームの魅力ではない!ということですね。それをこのオトメドメインの感想記事で伝えていきたいと思います。
次にこのゲームに登場する変わったヒロインたちを紹介しましょう。
まずはこのゲームのメインヒロイン
「西園寺風莉」さん
でました、本作切ってのぶっ飛ばしヒロイン。
ゲーム開始早々にペットボトルに放尿をかまし、プレイヤーに大打撃を与えるその張本人です。
この画像を見ただけでこのゲームが他のゲームと一線を画しているということがよくわかりますね。
とりあえずこの女の子は常識外れすぎて思考回路、行動や感情などが支離滅裂で意味不明。
プレイしているときは主人公もプレイヤーも戸惑わずにはいられないでしょう。
ですがこう見えても家はお金持ちのお嬢様。
本人も通っている女子校の理事長を務めています。
おばあさんを亡くしたことで天涯孤独の身となった主人公をかつておばあさんがメイドとして家に勤めていたことから主人公を女子校に引き入れた人物です。
このヒロインは確かに奇抜な行動や発言に目が行ってしまう͡娘ですが、その魅力は何事にも全力であるということですね。
そして主人公とは「おばあさん」という過去のつながりを持つ唯一のヒロイン。
この娘が個別ルートでどんな物語を巻き起こすのか・・・
想像もつきませんね・・・
次に家事ダメダメ芸人
「貴船柚子」さん
なぜそんなに家事ができないのか・・・
そして何よりなぜそんなに自信満々なのか・・・
公式から「大和撫子だけどメシマズお嬢様」と言われてしまう始末。
ちょっと・・・いやかなり残念な女の子ですね。
家事ができないだけならよくないか?と思うのですが、自信満々の彼女は積極的に家事をしようとするので何をしても事故が起こってしまうんですよ・・・
そのせいで元々寮で暮らしていた柚子はある日料理をしたところ寮の中で悪臭が発生し追い出されてしまうということもありました。
それが原因で主人公たちが住む第二寮が作られたという経緯もあります・・・
基本的には可愛いお姉さんキャラで、見た目は完全にお嬢様・・・
なのですが・・・その中身はアグレッシブなお転婆娘。
なにか面白そうなことがあると何でも突っ込むヒロインです。
そんな彼女が物語でどう突っ込んでいくのか楽しみなところですね。
次に中二病ヒロイン
「大垣ひなた」ちゃん
見た目からわかる通り中二病で自分のことを
ヒロインの中では一人だけ年下の後輩です。
しかしながら根が本当にいい子なのですぐ中二病モードが解けてしまうという昨今増えてきた中二病キャラとしても少し残念な娘です。
中身は甘々な娘で、共通ルートで一度湊に助けられて以来湊のことを「おねえさま」と呼ぶようになります。
最近増えてきた中二病ヒロインですがこの娘はどんなお話が繰り広げられるのでしょうか。
これだけを見るとこのヒロインたちどこがええんや・・・って思うかもしれませんが
それは個別ルートをお楽しみにということでよろしくお願いします。
共通ルートではそんな彼女たちと女装をする彼が一緒に馴染んでいくまでが描かれています。
彼女たちは元からそれなりに問題を抱えていて、湊がやってきて一番の変化を与えるのがやはり第二寮の生活についてです。
お婆さんがメイドをしていたことから家事が完璧な湊。
おそらくこれから一人でも暮らしていけるように家事を叩き込んでいたのだと思いますが一般的な学生とは逸脱している家事能力の持ち主です。
第二寮は湊を除きヒロイン三名と顧問の先生の計四人で暮らしていましたがご飯は適当に出前を取ったり掃除もおざなりとなんともよろしくない状態でした。
世話焼きである湊はこの状況に耐えられず家事全般等を管理することになります。
これにより第二寮の生活は一変し、毎日湊が朝ごはんを作り、弁当も湊のお手製。
夜ごはんも当然湊が作ってお風呂の用意や掃除洗濯等もすべて湊が受け持つようになります。
ここはちょうど必要とされているところに収まったという感じでしたね。
次にヒロイン達の問題も少し明らかになります。
柚子は家事ができないというのが一番明らかな問題点ですが、
他の二人もそれなりに問題点を抱えていて、
例えばひなたちゃんはその趣味としゃべり方から当然のように女子校で馴染めるはずもなく、クラスで一切馴染めていないという状態です。
共通ルートではそのことに関して湊たちが友達を作ろうとひなたちゃんのために協力する機会があったのですが、彼女はそれなりに自分がどういう立ち位置なのか理解しているようで、自分の趣味が合わない人と友達になったとしても自分がいるだけで趣味の話ができなかったりするのは違うのではないかということで結局その問題は解決しないまま終わってしまいます。
彼女が非常に人想いの人間であるか、どれだけ自分のことを理解しているかということがわかりますね。
しかし男の子のような趣味を持つひなたちゃんは湊に対してはこの学園に来て以来初めて少し心を開ける人間のようで、趣味やその恰好を見ても嫌なそぶりを一切見せない湊のことを親しく思い始めたようでした。
また先ほどもキャラ紹介で話していたのですが湊に助けられたひなたは湊をおねえさまと呼び一気に距離が近づいてきてその甘えん坊な年下らしい部分も見せるようになりました。
この辺が個別ルートでどう効いてくるかが見どころですね。
もう一人の風莉さんが一番共通ルートで変化を魅せるキャラクターです。
風莉さんはその理事長という立場から「自分が学生と仲良くするのは贔屓しているように見えるのではないか」ということで普段の生活では同じ寮の女の子たちとも学内ではあまり仲良くしないように心がけていたようでした。
また、こう見えて成績が非常によろしくなく、それは理事長というイメージからかけ離れているためそのことは周りの生徒に隠していたようです。
学内で本当に仲良くできる友達がいなかったという現状ですね。
そこに湊が一歩踏み出して、まずは湊が風莉の最初のお友達になるところから風莉の変化は始まります。
ときに二人は衝突することもありながら風莉は成長し、自分を周りにさらけ出せるようになります。
ここまでヒロインの問題やその解決についても語ってきましたが、主人公にも問題があり、それは当然主人公が女装をしている男の娘だということです。
女子校で生活する中で自分が男であるということを秘密にしてヒロインたちをだましていることや男であることから存在そのものが迷惑になってしまっていること。
過ちを犯して、そして深く、実感してしまう。
自分が乙女の学園の中で、いかに異質な存在なのか。
やっぱりボクは・・・
──こんな場所に存在してはいけなかったのだ。
この辺りがこのゲームをとてもまじめに作っているなあと思うところで、
こういうシチュエーションを凝った作品はこのような感情的なものが置き去りにされていて違和感を感じる部分が多々あるのですが主人公が今の現状を真摯に受け止めてそれがダメだと考えているところは非常に良い部分だと思います。
シチュエーションにリアリティが生まれますよね。
他の人とも打ち解けてきた風莉さんを見て、
──きっと今、何かが変わった。
風莉お嬢様は、たぶん、もう大丈夫。
・・・ねえおばあちゃん
・・・僕はお嬢様の力になれたのかな?
だとしたならば、もうこれで、僕のお役目は・・・。
この問題の一番重要な部分は解決する術がないということですね。
主人公が男であるということ、その事実は変わりませんし、
その対策をすることも難しいです。
そしてなにより湊自身がここにいる意味を失っていること
この部分があり、湊はこの学園を去ることを決意します。
・・・ごめんなさい、風莉さん
黙って出ていこうとする湊ですがなにやら物陰からひそひそ声が、
ひなた「(クク・・・来たっ!まだ気づいておらぬぞっ)」
風莉「(ひなた・・・声が大きいわ)」
ひなた「(ごめんなのだ・・・そ、それより)」
風莉「(ええ・・・準備は万端よ)」
柚子「(それじゃ、行きますよー?せーのっ)」
湊「なんの騒ぎですかこれ」
風莉「何って、ちゃんと言ったわよ?」
ひなた「本当に忘れちゃう人って存在したんだ・・・」
風莉「今日は湊の誕生日でしょう?」
ひなた「ほら、お姉さま♪準備万端だから、こっちきてっ♪」
嬉しそうに駆け寄ってきて、
ひなたさんが僕の手を引っ張ろうとして──
・・・でも、それで気づかれてしまう。
ひなた「おりょ?お姉さま、この荷物何?」
湊「あ・・・こ、これは・・・」
引きずっていた荷物を、慌てて体の後ろに隠そうとする。
・・・でも手遅れだった。
湊「あの・・・皆さんに、大事なお話・・・が・・・」
風莉「え・・・」
・・・あれ、おかしいな。
なんでだろう・・・?声が、出てこない。
ひなた「あ・・・わわっ、お姉さまっ?」
柚子「泣いて・・・いらっしゃるんですか?」
・・・え?
──言われて、ようやく僕は気が付いた。
湊「あれ・・・?あれ?」
「な、なんで・・・。どうして、ボク・・・」
どうして泣いているのか、自分でもよくわからない。
ただ突然、胸が苦しくて──
そして唐突に、蘇る。
湊の母「ハッピーバースデー、みーちゃん!」
湊の父「・・・おめでとう、湊」
ずっと昔・・・お父さんとお母さんが、言ってくれた
祖母「大きくなったねえ・・・おめでとう、湊」
一年前の今日、おばあちゃんも言ってくれた。
二人きりで、お誕生会を開いてくれた。
湊「あ・・・あ・・・」
おばあちゃんの手の感触を、はっきりと覚えている。
・・・思い出して、しまった。
得体のしれない何かが、ずっと見ないようにしていた
その感情が、いきなり胸の奥から迫りあがってくる。
駄目・・・無理・・・。隠せない・・・あふれちゃう・・・。
湊「こんなの・・・ひどい・・・です・・・」
「おめでとう・・・なんて・・・そんなこと、言わないでください・・・」
「えぐ・・・っ、ボクに、優しくしないで・・・っ」
「だって、嬉しいから・・・!いろんなこと、思い出しちゃうじゃないですかぁ!」
幸せな記憶を、思い出して。
それを失ったことまで、思い出してしまって。
湊「ご、ごめ・・・なさい・・・、ボク・・・ボクはっ」
「あ・・・あ・・・、ああああぁぁ・・・・・!!」
──ずっと我慢していたものが、堰を切る。
止めようと思っても、熱い液体が目から溢れてしまう。
考えてみれば、おばあちゃんが死んでから、初めてだった。
湊「なんで・・・っ!今になって・・・!おばあちゃん・・・!お父さん・・・おかあさぁん・・・!」
今まで泣かずに我慢できていたのに、本当にどうして。
──僕は、一人ぼっちだ。家族なんて、もう誰もいない。
だから、一人きりで、強く生きていかなければいけないのに。
目の前に、与えられてしまった。
お誕生日おめでとうって、みんな嬉しそうに、
本当に気持ちを込めて、みんなが言ってくれた。
それはまるで、本当の家族のように思えてしまって。
無くしたはずの、諦めていたものを、見つけてしまって。
決して気づいてはいけなかったものなのに。
湊「こんなのっあんまりです・・・!だめっなのに・・・!」
「誰か、たすけてよぉ・・・。ひぐっ、あああああ・・・!」
取り乱して、もう泣くことしか出来なくなる。
子供みたいに、救いを求めて、みっともなく泣きじゃくる。
風莉「湊・・・、私、どうすればいいの・・・?」
湊「風莉・・・さん・・・、えぐっ、ああ・・・っ」
揺らいでいた感情が、引き付けられていく。
湊「ボクは・・・ボクは・・・、ぐすっ、でも・・・!」
風莉「いいから・・・言ってみて?」
そんなの、言ってはいけない我儘だ。間違っている。
湊「ぼ、ボクは・・・ここで・・・っ、みんなと、一緒に・・・!」
「ボクは、ここにいたいです・・・!このままずっと!」
きっと優しく受け止めてもらえるだろう。
そうして僕は、そのぬくもりに余計惑わされていく。
そんな予想をした、けれど。
風莉「・・・ねえ。私、少し怒っているわ」
湊「ふぇ・・・かざり・・・さん・・・」
風莉「勝手にいなくなるなんて、許さない」
少し高圧的な言い方に、むしろ救われたのかもしれない。
なぜならそれは、選択を求めていないから。
理性も、常識も・・・風莉さんが僕から取り上げてくれた
風莉「あなたは、私たちの側にいて。これは命令よ」
湊「ぐすっ、はい・・・、はい・・・!」
風莉「本当に、しょうがない子ね・・・。このままでいたい?
そんなの、いいに決まっている。当たり前でしょう?」
「だって、私たち・・・あなたのことが大好きよ?」
・・・・・
ここで共通ルートが終わり、個別ルートに入っていくわけですよ・・・
では少し考察していきましょう。
まずは今回の湊の問題点は先ほど述べたようにどうやっても解決できない問題です。
さらに風莉さんの人間関係の問題も解決し始めて、ここに存在している意義さえ見失いかけている湊。
そんな彼にふいに与えられた誕生日のお祝い。
昔の楽しかったころを、そしてそれを失っているという現状も思い出した湊。
そんな彼は涙が止まらなくなってしまいます。
そんな彼がなぜ「たすけて」と言ったのか、それは今まさにそれを失ってしまうからです。
家族のような温かい人たちに祝われて、しかしそれを今から失わなくてはならなくて。
それが同時に来ているから、助けを求めているのです。
アニメやゲームの主人公では天涯孤独という設定はよくありますが
あまりその部分を感傷に浸っている主人公はいませんよね?
このゲームはしっかりとその部分を描いているのです。
これは私の中ではとても素晴らしい評価ポイントでしたね。
今まで小さい感情表現はあったけれどもあまり強い感情を見せてこなかった湊がここのシーンで初めて強い感情を見せるわけです。
次にここにいたいと言った湊に対する風莉の発言について、
だいたいこういう状況に陥ってる人間に考えさせてしまうと良いことはないんですよね。
身寄りがいないその孤独感に常に苛まれている彼にこのままここにいてもいいのか?と考えさせても今回のようにネガティブな発想に陥ってしまうことが多いでしょう。
ここにいてもいいと認められたとしても、また考えてしまったときにやはりここにいてはいけないという考え方になってしまうと思います。
だからこその風莉の発言「あなたは、私たちの側にいて。これは命令よ」があるわけです。
湊に考えさせるのではなく、あなたがここにいたいのであればいてダメなわけがない。だからあなたは何も考えずにずっと私たちの側にいなさいということです。
いやーーーーーすばらしい。
この作品のスゴイところは感情表現の描写が非常にキレイで生々しいところなんですよね。
私はこういう部分こそがキャラクターを輝かせるのだと考えています。
共通ルートだけでここまでキレイなお話を聞かされて、
個別ルートが期待できないわけがないですよね!?
実は割とこの共通ルート自体と個別ルートの構成は似通っていて、
仲良くなる→問題発生→解決に導く
という流れで進んでいきます。
この構成も完成されていて非のつけようがありませんでした。
彼女たちに救われた湊が個別ルートで彼女たちを救い出す。
そんなお話です。
ちょっぴり残念な彼女たちですけれど、
そんなところも好きになってしまいますよね。